新リース会計基準(企業会計基準第34号)および適用指針第33号の公表により、サブリース(転貸借)取引を行う「中間の貸手」の実務は大きな転換期を迎えました。
これまでは「建物そのもの」を基準に考えていましたが、これからは「借りる権利(使用権資産)」を基準に考える必要があります。今回は、適用指針の最新設例(設例18)の内容を反映し、判定から表示ルールまでを詳しく解説します。
- 判定の基準:建物の寿命ではなく「ヘッドリースの残存期間」が物差しになる
- 損益の表示:ファイナンス・リースの場合は原則として「純額」で計上する
- 貸借対照表:オーナーへの負債と、転借手への債権は相殺禁止
- 例外:短期・少額リースの簡便法適用時は、常にオペレーティング・リース
1. 判定基準の改正:物差しは「使用権資産」
中間の貸手が、サブリースを「ファイナンス・リース」か「オペレーティング・リース」か分類する際、これまでの日本基準では建物の耐用年数(例:50年)を基準にしていました。しかし、今後はオーナーから借りた「使用権資産」の期間を基準にして判定します。
なぜ「権利」を基準にするのか?
中間の貸手は「建物そのもの」をコントロールしているのではなく、オーナーから与えられた「一定期間使う権利」を小分けにして貸し出している立場だからです。自分の持ち時間(権利の期間)を基準にする方が、取引の実態を正確に反映できると考えられています。
2. ファイナンス・リース(FL)と判定される「75%・90%基準」
以下のいずれかに該当する場合、サブリースはファイナンス・リースに分類されます。
サブリース料の現在価値が、独立第三者間取引における「使用権資産のリース料」の概ね90パーセント以上である場合。
サブリースの期間が、ヘッドリースの「残りのリース期間」の概ね75パーセント以上である場合。
※(1)の判定結果が90%を大きく下回ることが明らかな場合を除きます。
※分母が「建物の寿命」から「ヘッドリースの残存期間」へと短くなるため、今回の改正によってファイナンス・リースに該当するケースが大幅に増えることが予想されます。
3. 分類ごとの会計処理(設例18に基づく)
中間の貸手は、分類に応じて以下の処理を行います。
① ファイナンス・リースに該当する場合
「権利を明け渡した」と考え、使用権資産を消滅させて債権に振り替えます。
- 資産の振替: 使用権資産を取り崩し、代わりに「リース投資資産(またはリース債権)」を計上します。
- 損益の計上: 資産の取崩しに伴う損益は、原則として純額(ネット)で計上します。
② オペレーティング・リースに該当する場合
「権利を保持したまま貸している」と考え、使用権資産を保持し続けます。
- 資産の維持: 「使用権資産」をB/Sに残し、毎期減価償却を行います。
- 収益の計上: 転借手から受け取るリース料を、期間にわたって収益として計上します。
4. 表示の重要ルール:B/Sは総額、P/Lは純額
サブリース特有の表示ルールは、財務諸表の見た目に大きな影響を与えます。
■ 貸借対照表(B/S):相殺禁止(総額表示)
オーナーへの「リース負債」と、転借手への「リース投資資産」は、相手方が異なる別々の契約であるため、相殺せずに両建てで表示しなければなりません。サブリース規模が大きいほどB/Sが膨らみます。
■ 損益計算書(P/L):原則「純額表示」
ファイナンス・リースの損益は原則として純額で計上します。ただし、商品の販売やサービスの提供と組み合わせてサブリースを行っている場合などで、総額で計上する方が適切であると考えられるときは、総額(グロス)表示も認められます。
5. ヘッドリースがオフバランスの場合
オーナーとの契約(ヘッドリース)について、短期リースや少額リースの簡便的な取扱いを適用して資産・負債を計上していない場合、そのサブリースは自動的に「オペレーティング・リース」に分類されます。元となる使用権資産がB/Sにないため、FLとしての債権振替ができないためです。
まとめ:財務指標の変化に備えましょう
新基準下のサブリース実務では、判定の物差しが「使用権」に変わることにより、B/S上で負債と債権が両建てになるケースが増加します。
経営指標としては、自己資本比率の低下や総資産回転率の変化が予想されます。まずは自社のサブリース契約を「75%・90%基準」に照らして再点検し、財務諸表へのインパクトを早期に把握することをお勧めします。

