新リース会計基準に基づき計上された「使用権資産」は、バランスシートに計上して終わりではありません。計上後は、自社で保有する建物や備品と同じように、毎期の減価償却が必要となります。
今回は、実務上の大きなポイントとなる「償却期間を何年にするか」と「どのような計算方法で償却するか」というルールについて詳しく解説します。
使用権資産の減価償却 3つのポイント
- 償却期間:「最終的に自分のものになるか」で期間が決まる
- 償却方法:社内の他の固定資産と同じルールを適用する
- 損益の影響:利息費用と合わせることで、初期の費用負担が重くなる
1. 償却期間の決定:所有権の行方が判断の分かれ目
使用権資産を何年で償却するかは、そのリース契約が「最終的に自社のものになるかどうか」によって2つのパターンに分かれます。
| 区分 | 償却期間の考え方 |
|---|---|
| 所有権移転リース (最終的に自分のものになる) |
その資産自体の「経済的耐用年数」 ※自社で購入した固定資産と全く同じ期間で償却します。 |
| 所有権移転外リース (最後は返却する) |
「リース期間」または資産の「経済的耐用年数」のいずれか短い方 ※実務上は、返却を前提とした「リース期間」となることが一般的です。 |
💡 公認会計士の視点:
「最後は返す」という契約(所有権移転外)の場合、たとえ資産自体が10年持つものであっても、契約期間が5年であれば5年で償却しきらなければなりません。リース終了時には「使用する権利」そのものが消滅するためです。
「最後は返す」という契約(所有権移転外)の場合、たとえ資産自体が10年持つものであっても、契約期間が5年であれば5年で償却しきらなければなりません。リース終了時には「使用する権利」そのものが消滅するためです。
2. 償却方法の選択:社内ルールとの一貫性
次に、どのような計算式で償却するか(償却方法)を決定します。これについては、以下のルールが適用されます。
原則的なルール:
自社がすでに所有している「類似の固定資産」と同じ減価償却方法を適用します。
- 定額法:毎年一定の額を費用化(オフィス家賃や建物などで一般的)
- 定率法:初期に多く費用化(車両やパソコンなどで一般的)
例えば、自社所有の営業車を「定率法」で償却している企業であれば、新しくリースした車両の使用権資産も、同様に「定率法」で償却するのが基本となります。
3. 損益計算書(P/L)への影響:費用の「前がかり」現象
新基準では、これまでの「支払家賃」を支払った分だけ費用にする処理とは異なり、以下の2つを合算して損益を計算します。
- 減価償却費:資産を期間で配分(毎期一定、または徐々に減少)
- 利息費用:負債の残高に対して発生(初期に多く、後半に減る)
新基準による費用発生のイメージ
減価償却費(安定して発生)
利息費用(契約初期は金額が大きい)
結果:契約の初期ほどトータルの費用負担が重くなる
4. まとめ:正確な管理が正しい経営判断を生む
使用権資産の減価償却において、実務上特に注意すべきは以下の2点です。
- 所有権が移転しない契約なのに、資産の耐用年数(長い期間)で償却していないか?
- 社内の類似資産と、使用権資産で償却方法がズレてしまっていないか?
これまでの賃貸借処理に比べて、営業利益や純利益に与えるインパクトが大きくなる可能性があります。固定資産台帳やリース管理システムの設定を改めて確認し、適正な償却計算を行える体制を整えましょう。

