【リース会計基準】オンバランス化後の会計処理と財務指標への影響を会計士が解説

オンバランス化後の会計処理と財務指標への影響を会計士が解説 | midorichi.com

前回記事【新リース会計基準 徹底解説②】適用範囲と免除規定を会計士が解説では、新リース会計基準改正案の「適用範囲」と、実務負担を軽減する「短期・少額リース」の免除規定について解説しました。

「うちの会社もオンバランス処理が必要なリース契約があるみたいだ…。」
「じゃあ、具体的にどんな会計処理をすればいいの?今の費用処理と何が変わるの?」
「会社の財務諸表にはどんな影響が出るんだろう?」

今回は、こうした皆さんの疑問にお答えするため、いよいよ新リース会計基準における借り手側(リース利用者側)の具体的な会計処理に踏み込みます。オンバランス化後の「使用権資産」と「リース負債」の計上から、減価償却費、利息費用の計上まで、仕訳例を交えながら分かりやすく解説します。

さらに、改正によって企業の財務指標がどう変動し、それが経営判断や外部評価にどう影響するかについても、会計士の視点から深く掘り下げていきます。

⚡ 本記事で学べること

  • オンバランス化後の「使用権資産」と「リース負債」の具体的な計上方法
  • 新基準における「減価償却費」と「利息費用」の認識方法を解説
  • D/Eレシオ、ROA、EBITDAなど主要財務指標への影響
  • 財務指標悪化への対応策と経営戦略上の考慮点
👩🏻‍💻

編集長(公認会計士)のコメント

新リース会計基準への対応は、単なる経理作業の変更に留まりません。特に「オンバランス化」は、企業の貸借対照表を大きく変動させ、その結果として重要視される財務指標にも影響を与えます。この影響を正しく理解し、経営層や金融機関、投資家に対して適切に説明できる体制を整えることが、今後の企業の評価を左右するでしょう。具体的な数値例でイメージを掴むことが重要です。

1. 借り手側の具体的な会計処理を理解する

免除規定を適用しないリース契約は、すべて「オンバランス処理」が必要になります。ここでは、その具体的な流れを見ていきましょう。

ステップ1:リース開始時:「使用権資産」と「リース負債」を計上

リース開始日に、借り手は以下の仕訳を行います。

  • 使用権資産(資産): リース料総額の現在価値(利息割引現在価値)に、当初発生費用などを加えた金額で計上します。
  • リース負債(負債): リース料総額の現在価値(利息割引現在価値)で計上します。

【例】5年リース、年100万円、割引率3%の場合

(簡略化のため、当初発生費用等は考慮しない)

割引計算により、リース料総額500万円の現在価値が例えば460万円と算出されたとします。

仕訳例(リース開始日):

(借方)使用権資産 4,600,000円 / (貸方)リース負債 4,600,000円

【会計士視点でのポイント】
この「割引率」の算定が実務上、複雑になる可能性があります。リース会社から提示される「リース料率」から逆算したり、企業の追加借入利子率などを参考にしたりと、適切な割引率の選択が重要です。

ステップ2:リース期間中:「減価償却費」と「利息費用」を計上

リース期間中は、以下を計上します。

  • 使用権資産の減価償却費: リース期間にわたって、定額法などで費用計上します。
  • リース負債の利息費用: リース負債の残高に割引率を乗じて算定し、費用計上します。リース負債は、リース料の支払いを経て徐々に減少していくため、利息費用も期間経過とともに減少していくのが一般的です。

【仕訳例(毎期のリース料支払時)】

(例:年間100万円のリース料を支払い、そのうち利息費用が13.8万円、元本返済が86.2万円の場合)

(借方)減価償却費 XXX円
(借方)利息費用 138,000円
(借方)リース負債 862,000円 / (貸方)現金預金 1,000,000円

【ここにリース負債の償却スケジュールと利息費用の推移を図解で挿入】

例: 年々減少するリース負債残高、それに伴い減少する利息費用、定額で計上される減価償却費のグラフなど

具体的な償却スケジュール(イメージ)

期首リース負債残高 リース料支払額 利息費用(割引率3%) 元本返済額 期末リース負債残高
4,600,0001,000,000138,000862,0003,738,000
3,738,0001,000,000112,140887,8602,850,140
2,850,1401,000,00085,504914,4961,935,644
1,935,6441,000,00058,069941,931993,713
993,7131,029,52029,811999,5200

2. 企業財務指標への「避けられない」影響と対策

オンバランス化は、企業の貸借対照表(B/S)を膨らませ、損益計算書(P/L)の費用構成も変えるため、様々な財務指標に影響を与えます。

影響1:貸借対照表(B/S)の変動

  • 総資産の増加: 「使用権資産」が計上されるため、総資産が増加します。
  • 総負債の増加: 「リース負債」が計上されるため、総負債が増加します。

会計士視点での影響

D/Eレシオ(負債資本倍率)の悪化: 負債が増えるため、自己資本比率が低い企業ほどD/Eレシオが悪化し、財務の健全性が低下したと見られる可能性があります。

影響2:損益計算書(P/L)の変動

  • 従来のリース料(販売費及び一般管理費など)がなくなる。
  • 代わりに「使用権資産の減価償却費」と「リース負債の利息費用」が計上される。
  • 費用の認識タイミングが変化: 従来の定額のリース料に対し、新基準ではリース開始当初に利息費用が大きくなるため、期間経過とともに費用が減少する傾向があります。

会計士視点での影響

ROA(総資産利益率)の悪化: 総資産が増加するため、ROAは低下する傾向にあります。

EBITDAへの影響: 減価償却費と利息費用はEBITDA(税引前利益に支払利息、税金、減価償却費を加算したもの)の計算では調整されるため、EBITDA自体への影響は小さくなることが期待されます。

影響3:キャッシュ・フロー計算書(C/F)の変動

  • 従来のリース料支払いは「営業活動によるキャッシュ・フロー」に含まれていましたが、新基準では「リース負債の元本返済額」は「財務活動によるキャッシュ・フロー」、利息費用は原則として「営業活動によるキャッシュ・フロー」または「財務活動によるキャッシュ・フロー」のいずれかに分類されます。

会計士視点での影響

営業活動によるキャッシュ・フローが増加し、財務活動によるキャッシュ・フローが減少する傾向にあります。C/Fの見た目が改善されると捉えられることもありますが、実態のキャッシュ・アウトは変わらないため、注意が必要です。

3. 財務指標悪化への対応策と経営戦略上の考慮点

財務指標の変動は、金融機関からの評価、格付け、そして投資家からの評価に直結します。適切な対応と説明が不可欠です。

対策1:金融機関・投資家への丁寧な説明

  • 新リース会計基準導入によって財務諸表がどのように変動したのか、その背景と実態を丁寧に説明する資料を作成しましょう。
  • 「実質的なキャッシュ・アウトフローは変わらない」「オフバランスだったものがオンバランスになっただけ」といった点を強調し、誤解を招かないようにすることが重要です。

対策2:適切なKPI(重要業績評価指標)の再評価

  • 従来のD/EレシオやROAといった指標だけでなく、リース負債の影響を調整した「リース調整後D/Eレシオ」や、リース料を営業費用として捉え続けた場合のP/Lなど、実態を反映した補助的な指標を活用することも検討しましょう。
  • IFRS適用企業がEBITDAを重視する傾向にあるように、非財務情報(ESGなど)と合わせた総合的な企業価値評価の視点も重要になります。

対策3:リースと購入の再検討、契約の見直し

  • オンバランス化によって、リースと購入の経済合理性を再度比較検討する機会となります。場合によっては、購入に切り替える方が有利なケースも出てくるかもしれません。
  • 短期リースや少額リースの免除規定を最大限活用できるよう、今後のリース契約の締結方針を見直すことも有効です。

まとめ:数字の裏にある「変化」を読み解き、未来に備える

新リース会計基準におけるオンバランス化は、企業の財務報告に大きな影響を与えます。しかし、これは決してマイナスな変化だけではありません。

リース契約の実態がより透明化され、企業の真の財務状況が明らかになることで、より質の高い経営判断や、投資家・金融機関との信頼関係構築に繋がる機会と捉えることができます。

会計処理の具体的なイメージを掴み、それが自社の財務指標にどう影響するかを正確に理解し、今から適切な対策を講じることが、これからの企業の成長を支える重要なステップとなるでしょう。

midorichi.comより
会計士として、私たちは単に数字を処理するだけでなく、その数字が企業の経営にどのような意味を持つのかを読み解き、未来へのアドバイスを提供することが使命だと考えています。新リース会計基準への対応も、この視点から貴社を全力でサポートさせていただきます。

※本記事は、ASBJの「リースに関する会計基準(案)」解説資料に基づき作成されています。最終的な基準は、今後の審議やパブリックコメントを経て確定されます。

※具体的な会計処理については、必ず専門家にご相談ください。

プロフィール
ねむりん

公認会計士のねむりんと申します。
このブログでは、日々の勉強や業務を通じて得た気づきや知識を、自分の備忘録も兼ねて発信しています。
会計に関する専門的な内容だけでなく、学びのモチベーション維持、キャリアや働き方についても取り上げながら、同じように努力されている方の参考になれば嬉しいです。

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