収益認識基準は、企業がどのタイミングでどの金額の収益を認識するかを定めたルールです。これをしっかり理解することで、会計処理を正確に行うことができます。初心者でもわかりやすく、重要なポイントを5つに絞って解説します!
この記事では、収益認識基準の基本的な5つのステップを押さえたうえで、図も交えて説明しますので、実務に役立つ内容を簡単に理解できますよ!
1. 収益認識の5ステップ
収益認識基準では、収益を認識するために「5つのステップ」が定められています。この5つのステップを順番に理解していきましょう。
収益認識の5つのステップ
- 契約の識別
企業と顧客の間で契約が存在することを確認します。 - 履行義務の識別
契約内で企業が顧客に提供すべき商品やサービス(履行義務)を識別します。 - 取引価格の決定
契約に基づいて、企業が受け取るべき金額(取引価格)を決定します。 - 取引価格の配分
複数の履行義務がある場合、取引価格を各履行義務に配分します。 - 収益の認識
履行義務を実行するタイミングで収益を認識します。
この5つのステップを図で整理すると以下のようになります:
契約の識別
顧客との間に有効な契約があるかを確認。
履行義務の識別
契約内の提供すべき商品・サービスを特定。
取引価格の決定
顧客から受け取る金額を見積もり、決定。
価格の配分
履行義務ごとに、取引価格を適切に配分。
収益の認識
履行義務を果たしたタイミングで収益を認識。
2. 収益認識のタイミング
収益を認識するタイミングは、契約の内容や提供するサービス・商品の性質によって異なります。主に以下の2パターンがあります。
一時的な提供の場合
- 商品やサービスを一度きり提供する場合。
- 収益は提供時に認識されます。
継続的な提供の場合
- サービスを時間をかけて提供する場合(例えば、サブスクリプションサービスや長期契約)。
- 収益は履行義務が進行するにつれて認識されます。
これを図で表すと、以下のように「提供時点」と「進行中」の違いがわかります。
図:収益認識タイミング
3. 変動対価の取扱い
変動対価とは、契約時に金額が確定しない部分(例:売上目標達成後のボーナス、割引など)です。このような場合、収益を認識する際に予測を行います。
変動対価の予測方法
- 最も可能性の高い額:顧客がボーナスを獲得する可能性が高い場合、その額を基に予測します。
- 期待される金額:過去のデータなどを基に、確率的に予測される金額を使用します。
予測方法によって収益が変動するので、注意が必要です。
図:変動対価の予測方法
図:変動対価の予測方法
4. 返品権付きの販売契約
返品権付きで販売した場合、顧客が商品を返品する可能性を考慮して収益を認識します。この場合、返品率を予測し、予測した金額だけ収益を認識します。
返品の予測
- 返品リスクの予測:顧客が返品する確率が高ければ、その分だけ収益を減らして認識します。
- 返品後の調整:返品が発生した際には、収益の調整を行います。
販売時の収益認識
販売時に返品リスクを予測し、収益を認識します。返品される商品分は控除して計上します。
【仕訳例(販売時)】
現金預金 15,000千円 / 売上高 13,500千円 / 返金負債 1,500千円
売上原価の計上
販売した商品に対する原価を計上し、返品される商品の原価を調整します。
【仕訳例(売上原価)】
売上原価 8,400千円 / 商品 9,000千円 返品資産 600千円 /
5. 特別な取引(知的財産のライセンスや有償支給取引)
知的財産のライセンス
- ライセンス契約では、契約内容が「一時的なライセンス」か「継続的なライセンス」かによって収益の認識タイミングが異なります。
有償支給取引
- 企業が製品やサービスを提供し、金銭的な対価を受け取る取引です。収益の認識時点や金額は契約内容によって変わります。
まとめ
収益認識基準は、契約内容や提供する商品・サービスに応じて収益を適切に認識するためのルールです。押さえておくべき5つのステップを理解しておけば、実務での収益認識をスムーズに行うことができます。また、変動対価や返品権付き契約についての取り扱いも重要なポイントです。
収益認識基準をしっかり理解し、企業の会計処理を正確に行いましょう!
おすすめの書籍
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1.『収益認識会計基準と税務 完全解説』
著者: 太田達也
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2.『フローチャートでわかる!収益認識会計基準』
著者: 内田正剛
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