【新リース会計基準】フリーレント(賃料免除期間)の会計処理とは?減額リースの実務ポイントを徹底解説

会計

不動産や設備のリース契約において、フリーレント(賃料免除期間)減額賃料が設定されることは少なくありません。
この記事では、IFRS16の下でフリーレント期間の会計処理をどう行うべきか、実務でよくある疑問をわかりやすく解説します。


フリーレント期間とは?

フリーレントとは、リース契約開始時に一定期間賃料の支払いが免除される期間を指します。
例えば、リース開始から3ヶ月間は月額賃料0円、その後は月額10万円の支払いとなるケースです。
不動産リースや長期契約におけるインセンティブとして一般的に使われます。


IFRS16におけるフリーレントの会計処理

1. リース負債の現在価値計算は実際のキャッシュフローに基づく

IFRS16では、支払時期と金額に基づきリース負債の現在価値を計算し、これに対応して使用権資産を認識します。
したがって、フリーレント期間中の賃料0円も含めた全期間のキャッシュフローで計算します。

2. フリーレント期間中も利息費用が発生する

  • リース負債残高に対して有効利子法に基づき利息費用を計上
  • 支払いがなくてもリース債務は利息分だけ増加(利息の繰延)

3. フリーレント期間中も減価償却費は計上される

  • 使用権資産はリース期間全体にわたり減価償却
  • したがってフリーレント期間中も減価償却費用を計上

実務例:フリーレント期間があるリース契約の処理

契約条件

  • リース期間:3年(36ヶ月)
  • フリーレント期間:初月〜3ヶ月(支払ゼロ)
  • 4ヶ月目以降:月額10万円の支払い
  • 割引率(年率):4%(月利約0.327374%)

① リース負債の現在価値計算

フリーレント期間中は支払いがないため、支払いは4ヶ月目から開始し、残り33回の支払いが発生します。
割引率(月利)

r = (1 + 0.04)^(1/12) - 1 ≈ 0.00327374 (約0.327374%)

現在価値(PV)は以下のように計算します。

PV = ∑t=436 100,000 ÷ (1 + r)^t

Excel関数例:

=PV(0.00327374, 33, -100000, 0, 0) / (1 + 0.00327374)^3

※割引係数は毎月(1 + 0.00327374)の累乗で計算。1〜3ヶ月目は支払なしのためPVは0。4ヶ月目以降の支払いを割引現在価値に変換して合計した結果がリース負債の現在価値となります。

計算結果は約3,007,000円となります。

② 使用権資産の初期認識

使用権資産の初期認識額は以下の通りです。

使用権資産 = リース負債の現在価値 + 初期直接コスト + 前払リース料 - インセンティブ受領額

本例では追加コスト等がないため、

使用権資産 ≒ 3,007,000円

となります。

③ 使用権資産の減価償却

均等償却を採用し、リース期間36ヶ月で配分します。

減価償却費 = 3,007,000 ÷ 36 = 約 83,528円/月

フリーレント期間中も同額の減価償却費用を計上します。

④ 利息費用とリース負債の元本返済(4ヶ月目例)

  • 月初のリース負債残高 × 月利で利息計上
  • 支払額から利息費用を引いた分が元本返済額
項目 金額
利息費用(3,007,000 × 0.00327374) 約 9,842円
元本返済 100,000 – 9,842 = 約 90,158円

会計仕訳例:1〜4ヶ月目

支払額 利息費用 元本返済 減価償却費 仕訳例
1ヶ月目(フリーレント) 0 約 9,842円 0 83,528円
リース利息費用 9,842 / リース債務 9,842
減価償却費 83,528 / 使用権資産 83,528
2ヶ月目(フリーレント) 0 約 9,875円 0 83,528円
リース利息費用 9,875 / リース債務 9,875
減価償却費 83,528 / 使用権資産 83,528
3ヶ月目(フリーレント) 0 約 9,908円 0 83,528円
リース利息費用 9,908 / リース債務 9,908
減価償却費 83,528 / 使用権資産 83,528
4ヶ月目(支払開始) 100,000円 約 9,942円 約 90,058円 83,528円
リース債務 90,058 / 現金預金 100,000
リース利息費用 9,942 /
減価償却費 83,528 / 使用権資産 83,528

※リース債務残高は利息分だけ増加し、支払時に元本が減少します。計算は端数調整や複利効果で若干の差異があります。


 まとめポイント

項目 処理
フリーレント期間 支払なしでも利息費用と減価償却費を計上
使用権資産 リース負債の現在価値で初期認識
減価償却 リース期間全体で均等償却
利息と元本返済 有償期間開始時から利息計上・元本返済

まとめ:フリーレント期間でも費用はゼロにならない

会計項目 フリーレント期間の取扱い
リース負債のPV 実際の支払スケジュールに基づき計算
利息費用 支払がなくてもリース負債に利息が発生
減価償却費 使用権資産に基づきリース期間で配分

つまり、フリーレントだからといってP/L上の費用がゼロになるわけではなく、利息費用と減価償却費用を正確に計上することが重要です。


参考リンク


この記事が「IFRS16におけるフリーレントの処理」の理解に役立てば幸いです。
他にも「契約の識別」や「変動リース料の扱い」など論点別の記事も予定しています。