【新リース会計基準】親会社・子会社間リースの認識と連結会計処理について解説

会計

近年のリース会計基準改正に伴い、IFRS 16(およびオーストラリア基準AASB 16)が適用されるようになりました。特に親会社が子会社に対して資産をリースする場合の会計処理や連結決算上の取り扱いについて、多くの企業が疑問を抱えています。今回は、実務上よくあるケースを踏まえ、親子間リースの認識と連結時の調整方法について解説します。

1. 親会社が子会社にリースを貸す場合の処理

親会社が所有する資産(例えば建物の一部)を子会社にリースする場合、親会社の個別財務諸表ではこのリースは「オペレーティングリース」として扱われることが一般的です。つまり、親会社は資産を帳簿から除外せず、リース収益を収益計上します。

一方、子会社の個別財務諸表では、IFRS 16の適用により「使用権資産(Right of Use Asset、RoU)」と「リース負債」を認識します。これは長期的なリース契約であり、低価値資産や短期リースの例外に該当しない場合です。

2. 連結決算時の問題点

このような親子間リースでは、連結財務諸表を作成する際に同じ資産が二重計上されるリスクがあります。具体的には、

  • 親会社の帳簿には資産(PPE)が計上されている
  • 子会社の帳簿にはRoU資産とリース負債が計上されている

このままでは、連結財務諸表上で資産が重複して表示されてしまいます。

3. 連結時の調整方法

この問題に対しては、以下のような方法で調整が行われます。

  • 連結決算の際、子会社のRoU資産およびリース負債を消去する仕訳を行う
  • リース収益と対応するRoU資産の減価償却費、ファイナンスコストを相殺する

なお、多くの企業は連結ソフトウェアにて、子会社のリースを「旧基準のオペレーティングリース」として処理することで、自動的にグループ内取引の消去を行いやすくしています。ただし、この処理には手作業での調整が必要な場合もあり、IFRS 16適用によって連結処理の業務負荷が増加しています。

連結上の処理例(数値は省略)

具体的な連結仕訳例は以下の通りです。

① 賃貸借契約締結時の使用権資産・リース債務の取消

(借)リース債務 / (貸)使用権資産

② 賃借料の支払い・振替処理および減価償却費の計上の取消

【賃借料の振替処理の取消】

(借)支払賃借料 / (貸)リース債務
       / (貸)支払利息

【減価償却費の計上の取消】

(借)使用権資産 / (貸)減価償却費

③ 支払家賃の連結消去

(借)受取家賃 / (貸)支払賃借料

4. その他のグループ内取引における連結調整の類似事例

親子間リースに限らず、グループ内の資産建設などでも同様の調整が必要です。例えば、

  • 子会社が親会社向けに固定資産を建設する場合、親会社はIAS 16に基づき資産計上
  • 子会社はIFRS 15に基づき収益認識を行う

このように会計基準の違いにより、連結消去が簡単にできないケースも多く存在します。

5. 投資用不動産のグループ内リースの実務

ある企業では、投資用不動産をグループ内の小売店にリースしつつ、第三者にも貸し出しています。この場合、グループ内リースに関するすべての残高を取り消し、リース収入とRoU資産の減価償却費、ファイナンスコストを相殺します。しかし、完全に一致しない差額は最終的に調整が必要であり、2年目以降は繰越利益剰余金の調整も伴うため複雑さが増します。

まとめ

IFRS 16の導入により、親会社・子会社間のリース取引は個別会計上は異なる処理となりますが、連結決算では重複計上を避けるために慎重な調整が求められます。連結処理の複雑化に対応するため、システムの改修や社内手続きの見直しも必要となるでしょう。今後も実務上の運用ルールやベストプラクティスの共有が望まれます。

ご不明点やより具体的なケースについては、専門家への相談をおすすめします。

(この記事はIFRS 16の親子間リース会計の一般的な考え方をまとめたものです。)
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