「海外子会社の税率が低いと、親会社で追加課税される?」
国際的な法人税引き下げ競争に歯止めをかける「グローバル・ミニマム課税(第2の柱)」がいよいよ実務フェーズに突入しました。
2024年3月22日、ASBJは実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」を公表しました。これにより、2024年4月1日以後開始する会計年度から、対象となる多国籍企業グループは、この新しい税制に基づく会計処理が必要となります。
今回は、これまでの法人税実務とは一線を画す「グローバル・ミニマム課税」の会計処理と開示のポイントを、公認会計士の視点で分かりやすく解説します。
編集長(公認会計士)のコメント
グローバル・ミニマム課税の最大の特徴は、課税の源泉となる所得が生じる企業(海外子会社)と、納税義務が生じる企業(最終親会社等)が異なる点にあります。実務上は海外拠点の詳細な情報収集が必須となりますが、本報告では「入手可能な情報に基づく合理的な見積り」を認めるなど、初動の実務負担に配慮した内容となっています。
⚡ 実務対応報告第46号の重要ポイント
- 計上時期: 対象会計年度(当期)において「合理的な見積額」を損益に計上する。
- 期中特例: 当面の間、四半期・中間決算では計上しないことができる(注記が必要)。
- B/S表示: 納付期限が1年を超えるものは「固定負債(長期未払法人税等)」に区分。
- P/L表示: 原則として「法人税、住民税及び事業税」に含めるが、重要な場合は注記。
会計処理:当期における「合理的な見積り」
グローバル・ミニマム課税は、グループ全体の国別実効税率が15%を下回る場合に、その差分を親会社側で納税する仕組みです。会計処理の原則は以下の通りです。
見積りの考え方
財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき、合理的な金額を見積り、当該年度の損益に計上します。
【実務上のポイント】
適用初年度など、海外拠点からの情報収集が困難な場合でも、その時点で入手可能な情報に基づいて最善の見積りを行う必要があります。後に確定額との差が生じても、それが「作成時の合理的な見積り」に基づくものであれば、誤謬(ミス)ではなく「見積りの変更」として処理されます。
期中決算(四半期・中間)の「当面の免除」
グローバル・ミニマム課税の計算は極めて複雑であり、期中決算の短期間で正確に算出することは実務的に困難であることが予想されます。
代替的な取扱いの容認
四半期(期中)財務諸表や中間財務諸表においては、当面の間、本税制に係る法人税等を計上しないことができます。ただし、この特例を適用した場合には、その旨を注記する必要があります。
貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の表示
1. 長期未払法人税等の区分
本税制の申告・納付期限は「会計年度終了から1年3か月〜1年6か月以内」と長いため、通常の法人税等と異なり固定負債に区分される可能性があります。
- 決算日の翌日から1年以内に支払期限がくるもの:流動負債(未払法人税等)
- 決算日の翌日から1年を超えるもの:固定負債(長期未払法人税等など)
2. 損益計算書での注記
連結損益計算書では原則として「法人税、住民税及び事業税」に含めますが、金額が重要な場合はその金額を個別に注記しなければなりません。個別財務諸表においても、原則として区分表示または注記が求められます。
📝 グローバル・ミニマム課税導入に向けた実務チェック
- □ 最終親会社等の連結グループ全体で、本制度の対象か確認したか
- □ 海外子会社の国別実効税率(ETR)を概算把握できる体制はあるか
- □ 2024年4月1日以後開始事業年度の決算スケジュールを見直したか
- □ 四半期・中間決算において「計上しない特例」を適用するか方針を決めたか
- □ 監査法人と見積りの「合理性」の根拠について事前協議したか
国際的な大増税時代に備える、プロの対応を
グローバル・ミニマム課税への対応は、単なる税金計算の変更ではなく、
全世界のグループ拠点から会計データを収集する「仕組み」の構築そのものです。
参考文献:
ASBJ 実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」
(ASBJ公式サイトで全文を見る)
midorichi.comより
税制はますます複雑化していますが、本実務対応報告のように「当面の取扱い」が示されることで、実務の着地点が見えてきます。midorichi.comは、今後も複雑な国際税務・会計のアップデートを分かりやすく解説し、バックオフィスの挑戦をサポートし続けます。

