月末月初、経理担当者のデスクに積み上がる領収書の山。その中身を確認していて、こんなため息をついたことはありませんか?
「また『上様』でもらってきている…」
「どうして個人名で領収書をもらうの?会社の経費なのに…」
「宛名が空欄のまま渡されても、こちらで記入するわけにはいかないのに…」
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始以降、領収書の記載要件は非常に厳格化されました。特に従業員による立替金精算においては、宛名の不備一つで仕入税額控除が認められなくなるリスクがあり、経理担当者の確認負担は増すばかりです。
編集長(公認会計士)のコメント
インボイス制度下では「後から書き足す」ことが原則禁止されています。不備があれば発行元への再発行依頼が必要になり、現場の負担は計り知れません。「最初から正しい状態で受け取る」ための仕組み作りこそが、経理の残業を減らす最大の鍵です。
⚡ この記事で解決する3つのステップ
- ① 宛名ルール:現場が迷わない「OK/NG」の明確化
- ② 規定整備:精算をスムーズにする社内ルールの明文化
- ③ 現場教育:非経理職でも一目でわかる図解マニュアル術
インボイス制度で「宛名」はなぜ重要なのか?
これまでは多少の不備があっても、経理側で事実確認ができれば処理できていたケースもあったかもしれません。しかし、インボイス制度下においては、原則として「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(宛名)」の記載が必須要件となっています(※簡易インボイスを除く)。
特に注意が必要なのは、適格請求書を受け取った場合、受領者(自社)が自ら修正を加えることは認められておらず、発行元に再発行を依頼しなければならないという点です。たった一枚の領収書のために発生する莫大な業務コストを防ぐ対策を講じましょう。
ステップ1:宛名書き換えルールの明確化
宛名ミスが減らない最大の原因は、従業員への指示が「領収書をもらってきて」という曖昧なものに留まっている点にあります。
■ 「上様」と「空欄」の禁止
「上様」は、原則的な適格請求書では認められません。また、白紙の領収書に後から会社名を記入する行為は改ざんとみなされるリスクがあります。
- × NG:「上様」「空欄」「苗字のみ」
- ○ OK:「正式な会社名(株式会社○○)」
個人名宛の領収書の扱いを決める
実務上は、従業員が作成する「立替金精算書」とセットで保存することで、個人名の領収書でも処理可能ですが、現場の混乱を防ぐために「可能な限り会社名で受領する」という基本方針を周知しましょう。
ステップ2:社内規定用テンプレートの活用
ルールを決めたら、それを口頭ではなく「明文化」します。旅費規定や経費精算規定の一部として盛り込みましょう。
【領収書の受領に関する規定(案)】
第○条(証憑の受領)
会社経費の立替払いを行う際、受領する領収書(適格請求書)には、以下の事項が正しく記載されていることを現地で確認しなければならない。
1. 発行者の名称および登録番号(T+数字13桁)
2. 取引年月日・取引内容・適用税率ごとの対価
3. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(原則として当社の正式名称とする)
2. 前項の記載に不備がある場合、原則として経費精算を認めないものとする。
ステップ3:非経理職向け「一目でわかる」マニュアル
どれほど立派な規定を作っても、現場の社員がすべて読んでくれるとは限りません。以下のポイントを抑えた視覚的なマニュアルを配布しましょう。
- スマホに保存できる「画像1枚」にする: レジ前でサッと確認できる○×表を作成し、社内チャット等で配布します。
- レシートを推奨する: 手書きの領収書は宛名ミスや登録番号の漏れが多発します。「迷ったらレシートをもらってください」と案内するのも有効な一手です。
📝 従業員向け:精算前のセルフチェック
- □ 登録番号(Tから始まる13桁)はありますか?
- □ 宛名は「正式な会社名」になっていますか?(上様はNG)
- □ 日付と金額は正しいですか?
- □ 8%と10%の税率区分は記載されていますか?
フローを整え、本来の業務に集中しよう
立替金精算における宛名ミスの問題は、従業員の不注意だけでなく、具体的な指示の不足から起きていることが多々あります。
- 宛名ルール(原則会社名)を明確にする
- 規定に明記し、適度な強制力を持たせる
- 非経理職でもわかる「図解」を活用する
midorichi.comより
経理担当者の皆さま、毎日の業務お疲れ様です。インボイス制度への対応を「社内の精算フローを見直すチャンス」と捉え、より筋肉質な組織体制を作っていきましょう。midorichi.comは、バックオフィスの効率化に挑むすべての方を応援しています。


