【IAS 38】ソフトウェアライセンスの種類ごとの会計処理のポイントを解説

会計

この記事では、ソフトウェアライセンスの代表的な種類(オープンソースとクローズドソース)と、それぞれの会計上の取り扱い例について解説します。特に、IAS 38に基づく無形資産の認識判断や、Capex(資本的支出)とOpex(費用)の区別に役立つ内容です。


1. オープンソースライセンス(Open Source License)

特徴

  • ソースコードが公開されており、誰でも利用・改変・再配布が可能
  • 多くの場合、使用料は無料
  • 利用に関する制約がライセンスによって異なるが、基本的に自由度が高い

主なライセンスの種類と具体例

ライセンス種類 特徴 代表的な例
パブリックドメイン 著作権放棄、誰でも自由に使える SQLite(軽量データベース)
パーミッシブライセンス 改変・再配布自由、商用利用もOK、派生物にライセンス継承不要 MITライセンス、Apacheライセンス
コピーレフト 改変・再配布は可能だが、派生物も同じライセンスで公開する必要がある GNU GPL(General Public License)、AGPL

会計上の取扱い例

  • 無償かつ制限のない利用の場合、取得原価がないため資産計上しないことが多い
  • 商用利用で有料のオープンソースライセンスを購入した場合は、取得原価として資産計上の可能性あり

2. クローズドソースライセンス(Closed Source License)

特徴

  • ソースコードは非公開で、利用権のみが付与される
  • 商用利用が一般的で、ライセンス料が発生
  • 使用・改変・再配布は契約条件によって厳格に制限される

主なライセンスの種類と具体例

ライセンス種類 特徴 代表的な例
商用ライセンス 一般的に有償で提供され、契約により利用権を規定 Microsoft Office、Adobe Photoshop
プロプライエタリ(専有)ライセンス もっとも制限が厳しく、改変・再配布禁止など Microsoft Windows、AutoCAD

会計上の取扱い例

  • 永続ライセンスやカスタマイズ可能なソフトは無形資産として資産計上(Capex)
  • サブスクリプション型や利用期間限定は費用処理(Opex)が一般的

3. 会計処理のポイントと契約の判断基準

IAS 38の無形資産の認識には、「制御(Control)」の概念が重要です。具体的には、以下のポイントで判断します。

  • 制御権の有無:企業がソフトウェアから将来の経済的利益を享受し、他者の利用を制限できるか
  • ソフトウェアの所有形態:永続ライセンスか、期間限定のサブスクリプション(SaaSなど)か
  • カスタマイズ可能性:利用者がソフトウェアを改変・適応できるか

契約で確認すべき主なポイント

  • ソフトウェアを自社のサーバーにインストール可能か
  • ソフトウェアの更新・改変のタイミングを自社が決定できるか
  • 他者が同じソフトウェアにアクセスするのを制限できるか
  • 契約期間や利用権の範囲(永続的か期間限定か)

例えば、典型的なSaaS契約ではソフトウェアはベンダーの管理下にあり、顧客は更新タイミングを決められません。この場合は制御が認められず、費用処理(Opex)となることが多いです。一方、オンプレミスの永続ライセンスでは、企業がソフトウェアの制御権を持つため資産計上(Capex)が可能です。


まとめ

ライセンス区分 代表例 会計処理のポイント
オープンソース(無償) SQLite、Linux、Apache 資産計上なし(無償利用が前提)
オープンソース(有償) 商用サポート付きLinuxなど 資産計上の可能性あり
クローズドソース(永続ライセンス) Microsoft Office、Adobe Photoshop 資産計上(Capex)
クローズドソース(SaaS) Salesforce、Office 365 費用処理(Opex)

ご質問や実際の契約内容に応じた詳細な判断基準についても、またご相談ください。