【新リース会計基準】永続的リース(Perpetual Lease)の会計処理について解説

会計

IFRS 16の概要とリースの認識要件

IFRS 16「リース」では、借手はすべてのリース契約に対して、以下の2つを認識する必要があります:

  • 使用権資産(Right-of-Use Asset)
  • リース負債(Lease Liability)

リース負債は、将来のリース料を現在価値に割引いた金額で初期認識します。

永続的リースとは?更新オプション付き契約の取り扱い

例えば、次のような契約条件のビル賃貸契約を想定しましょう:

  • 契約期間:50年間
  • 毎月の賃料:300万円(年間3,600万円)
  • 5年ごとに賃料が3%増加
  • 契約に更新オプションあり(実質的に無期限)

IFRS 16では、契約期間に含めるかどうかは、「更新オプションを行使することが合理的に確実(reasonably certain)」かどうかで判断します。通常、50年以上の遠い将来にわたる更新オプションは確実とは判断されず、最初の50年間のみを契約期間とみなします。

割引率(Discount Rate)の選定とリース負債の算出

リース負債の現在価値を計算するには、以下のいずれかの割引率を使用します:

  1. リースに内在する利子率(存在すれば)
  2. 借手の追加借入利率(Incremental Borrowing Rate)

たとえば、年率3%の追加借入利率を使って300万円の月額賃料を割引すると、50年間で約7億〜8億円規模のリース負債となります。リース初年度の費用は利息部分が大きく、PL上では従来の賃料認識よりも費用が前倒しで計上される傾向にあります。

損益計算書(PL)への影響:利息費用と減価償却費

IFRS 16では、賃料支払いを以下の2つに分解して費用計上します:

  • 使用権資産の減価償却費
  • リース負債に対する利息費用

たとえば、上記の例で使用権資産を50年で直線法により償却すると、年間減価償却費は約1億4,000万円になります(取得原価が7億円と仮定)。

一方、初年度の利息費用はリース負債に対する3%で約2,100万円と仮定され、合計で約1億6,100万円の費用となり、従来の年間賃料(3,600万円)より大きくなるケースもあります。

適用方法:修正遡及法 vs 完全遡及法

IFRS 16を初めて適用する場合、以下の2つの方法が選択できます:

方法 特徴 メリット
完全遡及法 比較情報を含めてすべて再計算 過年度との一貫性が保たれる
修正遡及法 初度適用日のみで調整し、比較情報は再表示不要 実務負担が少なく、迅速に適用可能

実務では「損益計算書への影響を将来に限定したい」という理由で、修正遡及法が選ばれることが多くなっています。

まとめ:リース期間・割引率・影響評価のバランスが重要

永続的に見えるリース契約でも、契約上の更新オプションが「合理的に確実」と評価されない限り、会計上はそのオプション期間を除外します。

また、使用する割引率によってリース負債の評価額や損益への影響が大きく変動するため、適切な前提の設定と見積もりが不可欠です。