リース業における金融商品会計・リース会計基準の適用ガイド(2024年改正版)
リース業は、その業務内容の特殊性から、一般的な事業会社向けの会計基準をそのまま適用することが難しい場面が多くあります。特に、金融商品会計基準やリース会計基準の適用においては、業種固有の取引慣行を考慮した特別な取扱いが求められます。
本記事では、日本公認会計士協会が公表している「業種別委員会実務指針第19号」に基づき、リース業における金融商品会計基準および2024年に改正されたリース会計基準の適用に関する、当面の会計上および監査上の取扱いについて解説します。2024年の最新改正内容も踏まえ、リース会社が適切に会計処理を行うための実務的な指針をご紹介します。
この記事の要点
- リース業における金融商品会計基準適用が難しい背景と、そのための実務指針
- 債権の区分や貸倒見積高の算定における金融機関準拠の取扱い
- 販売型割賦と金融型割賦、それぞれの会計処理の詳細
- 2024年改正のリース会計基準への対応と適用時期、経過措置
1. はじめに:実務指針の背景と目的
1999年に公表された「金融商品に係る会計基準」は、2000年4月1日以後開始する事業年度から適用されました。これに伴い、日本公認会計士協会は「金融商品会計に関する実務指針」を公表しましたが、多数の金融資産・金融負債を保有するリース業にはそのまま適用できないケースが存在しました。
そのため、本実務指針(業種別委員会実務指針第19号)は、リース業の特殊性を踏まえ、特に「割賦債権等に係る貸倒見積高の算定」および「割賦販売取引の取扱い」について、金融商品会計基準を適用する場合の当面の取扱いを明確にする目的で策定されました。
なお、本実務指針で対象とする「リース業」とは、リースを主たる営業目的とするリース会社を指します。
2024年の改正について
本実務指針は、以下の会計基準等の公表・改正に対応するため、2024年9月13日に改正されました。
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(2018年3月公表、2020年3月改正)
- 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(2018年3月公表、2020年3月及び2021年3月改正)
- 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月公表)
- 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(2024年9月公表)
※旧版の項目「2.リース業における負債の包括ヘッジの取扱い」は削除されています。
2. 貸倒見積高の算定に関する取扱い
リース業は中・長期的な与信行為であり、多くのリース会社が貸金業登録を行っているため、信用リスク管理が非常に重要です。この点において、銀行等の金融機関と類似した性格を持ちます。
(1) 債権の区分について
金融商品会計実務指針第106項では、貸金業においては銀行等金融機関に準じた厳密な債権区分が求められるとされています。したがって、リース業においても、一般事業会社よりも厳密な金融機関に準じた信用リスク管理が望ましく、具体的には「銀行等監査特別委員会報告第4号」の考え方を適用することが適切とされています。
(2) 貸倒見積高の算定について
貸倒見積高の算定についても、債権の区分と同様に、「銀行等監査特別委員会報告第4号」に準じた方法で算定することが適切と考えられます。
(3) 適用に当たっての留意事項
「銀行等監査特別委員会報告第4号」の適用にあたっては、適切な自己査定が前提となります。監査人は、リース会社における自己査定に関する内部統制の整備・運用状況を十分に検討する必要があります。また、リース会社が保有する少額多量の債権についてグルーピングして査定を行う場合、その範囲と方法の妥当性を厳しく吟味することが重要です。
3. 割賦販売取引の取扱い
リース業における割賦販売取引(延払条件付譲渡を含む)は、大きく2つのタイプに分類されます。
(1) 割賦販売取引の性格
- 販売型割賦: 販売者としての利益部分(物品販売に伴う売却益)と金利部分の両方を利益として含む取引。
- 金融型割賦: 金利のみを利益として含む取引。
(2) 販売型割賦の取扱い
- 販売者としての利益部分: 履行義務が充足された時(物品を顧客に移転した時)に、割賦債権と割賦売上高を一括計上し、同時に割賦売上原価も計上します。ただし、販売者としての利益部分に重要性がなく、利益の大半が金利部分を占める場合は、金融型割賦とみなして処理することも可能です。
- 金利部分: 金利部分に重要性がある場合は償却原価法を適用し、利息法により金利を期間配分して収益計上します。
(3) 金融型割賦の取扱い
金融型割賦は、その経済実態が金融機能であるため、貸付取引等の金融取引と同様の処理を適用します。
- 当初計上: 現金購入価額(付随費用含む)または割賦債権の買取価額により割賦債権を計上します。
- 賦払金回収: 回収額を元本部分と金利部分に区分し、元本は割賦債権の回収、金利は金利収益として計上します。
- 金利収益認識: 販売型割賦と同様に利息法により計上します。
- 維持管理費用相当額: 賦払金に維持管理費用(固定資産税、保険料等)が含まれる場合で、その重要性が乏しいときは、当該費用相当額を割賦債権に含めることができます。
(4) 金融型割賦における強制解約時の処理について
金融商品会計実務指針では、未収利息を不計上とする延滞期間を「債務者の状況等に応じて6か月から1年程度が妥当」と定めています。利払いが毎月のように短期的に発生する金融型割賦においては、6か月以上の延滞で強制解約となった場合、計上済みの既経過未収利息に相当する部分を償却する必要があります。
4. 適用と経過措置
(1) 本報告の適用時期
- 初回公表時(2000年11月14日): 「2.リース業における負債の包括ヘッジの取扱い」(※現在は削除済み)を除き、2000年4月1日以後開始する事業年度から適用されました。
- 2024年改正(2024年9月13日): 2024年に公表されたリース会計基準を適用する連結会計年度および事業年度から適用されます。
(2) 経過措置
2024年改正版の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱います。原則として、新たな会計方針を過去の期間の全てに遡及適用します。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の、適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する簡便的な方法も認められています。
5. まとめ
リース業における金融商品会計およびリース会計基準の適用は、その取引の特性から複雑な側面を持ちます。本実務指針は、これらの複雑な状況に対し、会計上および監査上の具体的な指針を提供することで、リース会社が適正な会計処理を行う上で不可欠なものです。
特に、2024年のリース会計基準の改正は、今後の会計処理に大きな影響を与えるため、最新の指針を正確に理解し、適用することが求められます。疑問点や具体的な適用に関しては、必ず専門家である公認会計士や税理士にご相談ください。

